2007年06月06日00:18
さて、今月もやってまいりました。
納期。
ということで、お楽しみください・・・。

【四葉のクローバー】

※実話ではございませぬ。

清美「ねえ、聡」
聡 「ん?どした」
清美「今日さぁ」
聡 「うん」
清美「いいものみつけちゃった!」
聡 「いいもの?」


そう言って清美が四葉のクローバーを大事そうにおいらに見せたのは、
婚約する少し前だった。
どうやって見つけたのか、興奮してしゃべる清美を見ていると本当に
楽しそうだった。そして、幸せだった。

清美「ねぇ、聡」
聡 「ん?どした?」
清美「四葉の意味、知ってる?」
聡 「ん・・・。知ったかぶれるようなちゃんと知らないような・・・」
清美「あはは。知ったかぶりしてみてよ」
聡 「そーだなぁ・・・。幸運、だろ?あとは・・・。」
清美「あとは?」
聡 「愛と希望と、多分、金運だな」
清美「金運?」
聡 「ファイナルアンサー!」
清美「聡らしいね。くすくす。」
聡 「くすくすって声に出すこと無いでしょ。馬鹿にしてるのか!(^^)」
清美「教えてあげよっかぁぁぁぁ~」
聡 「どうせ馬鹿ですからねぇ。」
清美「ううん。そんなに的外れじゃないんだよ。金運」
聡 「ん?」
清美「金運はね、5つ目。5葉のクローバー。」
聡 「へぇ~。そーなんだ。」
清美「惜しい!」
聡 「金運じゃないとすると・・・健康!」
清美「あはははっ!もっと聡らしいね!健康かぁ。じゃ、幸運と愛と希望と健康ってことにしとこう!決定ぃぃぃぃぃ!」

聡 
清美が教えてくれなかった意味を後で調べた。
faith = 誠実、hope=希望、love=愛、luck=幸運。
健康、ではなかった。答えは「誠実」。

清美「ねぇ、聡」
聡 「ん?どした?」
清美「四葉のクローバー」
聡 「ああ 覚えてるよ」
清美「探してきてよ」
聡 「あお、おれが?」
清美「うん。お願い。二つ、見つけてきてね。」
聡 「何のために。」
清美「最後にあなたの誠実さが欲しいから。」
聡 「誠実、か」
清美「そう。せめて最後に。」
聡 「それで終わりにする、のか」
清美「そう、ね」
聡 「・・・。見つからなかったら?」
清美「見つかるわよ。お願い。」
聡 「別れる為にする努力なんて、俺はしたくない。」
清美「別れた後の私の幸運を祈って欲しいのよ。」

聡 
梅雨が明けて矢作川の土手は草が生い茂っている。
こんな中から四葉のクローバーを見つけるなんて、絶対無理だ。
草が生い茂っているだけならまだしも、かなり蒸し暑い。

聡 「なかったよ・・・。」
清美「じゃ、明日も探してね」
聡 「何で俺が探さなきゃならないんだよ!俺は別れたくないんだ」
清美「私は別れたいのよ。ちゃんとした区切りをつけたいの」
聡 「じゃぁ、おまえが探してくればいいじゃないか!」

聡 
翌日も結局探しに行った。
考えてみれば、清美が四葉のクローバーを見つけてきたのも7月だった。
こんな中で大変だったんだろうな、とふと思った。

faith = 誠実、hope=希望、love=愛、luck=幸運。

おいらが健康、と間違えたときに清美はそれでいい、といったけれど、
その気持ちが分かる気がする。
健康じゃなければこんな暑苦しい、しかも鬱陶しい草の中で蚊に刺されながら
クローバー探しなんてとても出来たものじゃない。探すなら冬にしてくれ!
と心の中で思いながら、それでも探してみた。

ふと顔をあげると、清美が立っていた。

聡 「清美・・・。」
清美「えらいわね。ちゃんと探してるじゃない」
聡 「ああ。でも見つからないな・・・。」
清美「見つけてくれるつもりはあるんだね。」
聡 「だからこうしてやってんじゃないか・・・。」
清美「私も探そうか?」
聡 「いい。俺が絶対見つけてやる」
清美「ねぇ、聡」
聡 「ん?どした」
清美「もう一回聞いていい?」
聡 「何を」
清美「見つけてくれるつもりはあるんだ、よ、ね?」
聡 「ああ」
清美「ちゃんと探してくれたら、って思ってたんだ。」
聡 「・・・。んん?」
清美「聡がちゃんと私の幸運を見つけてくれるつもりがあるなら・・・。って思ってたのよ。聡、ちゃんと探してくれてる。」
聡 「おまえが探せって言ったから、だろ・・・。」

清美「ねぇ、聡」
聡 「ん?」

清美「また二人で探そう。二人で頑張ろうよ!」
聡 「ん。え?き、清美・・・」
清美「ね?」

聡 「あ、ああっ。二人で探そう。四葉のクローバー。」